店舗キャンペーンの
デジタル化で応募数が倍増
ツルハドラッグが取り組む小売DXの劇的効果

コロナ禍を機に小売業界のデジタルシフトが加速している。その一方で、日本企業の労働生産性(一人当たりの付加価値)は各国と比べても低く、特に非製造業である小売・流通や宿泊事業は、全体の平均を大きく下回っている。ITツールの利活用によって効率化とDXを推し進めなければ、アフターコロナ時代において企業の成長は見込めない。

こうした小売業界の経営課題を解決するサービスの1つとして注目されているのが、ウィナスの「itsmon(いつもん)レシート」だ。ドラッグストア大手のツルハドラッグは、このレシート特化型AI-OCR搭載のitsmonレシートによって、デジタル販促施策で大きな成果を出したという。具体的にどのような取り組みだったのか。ウィナス Web戦略事業部の増子健太氏と、同プロジェクトを担当したツルハドラッグ営業推進部の加藤正之氏に話を聞いた。

ツルハドラッグ 店舗画像
レシート特化型OCRサービスを活用して、キャンペーン応募数を倍増させたドラッグストア大手のツルハドラッグ

販促キャンペーンの
デジタル化を実現

ツルハグループはツルハドラッグ・くすりの福太郎・ドラッグストアウェルネス・ウォンツ・くすりのレデイ・メディコ21・杏林堂スーパードラッグストア・B&Dドラッグストア・ドラッグイレブンを幅広く展開している。その中でもツルハドラッグは全国1350店舗(2022年1月31日時点)を展開し、ツルハグループ最多のシェアを誇るドラッグストアである。

そのツルハドラッグが2020年6月、itsmonレシートをチェーン全体で導入した。その背景には「販促キャンペーンのデジタル化」に対する課題があったという。

加藤氏は「購入必須型の販促キャンペーンを実施する際は、これまで基本的にはがきを利用していました。スマホアプリでポイントカードを運用しているにもかかわらず、キャンペーンだけはアナログで課題を感じていました」と当時を振り返る。

購入必須型のキャンペーンは、対象商品を購入した客が店舗に設置してある応募ハガキにレシートを貼り付け、事務局宛に郵送する方式が一般的。これでは来店客の負担になる上、事務局側も集計の負担が大きくなる。全てを手作業でチェックする必要があるので、数万件の応募があれば、処理にかかる時間も人的コストも膨大だ。

さらに、データを解析するノウハウがないため、せっかくデータを集めてもほとんど活用できていない現状があった。事務局の運営自体は外部に委託していたものの、「明らかに大変な作業量でした」と加藤氏は話す。

デジタル化に向けてWeb経由でキャンペーンを実施してみても、最終的には送られてきたレシート画像を目視でチェックする必要があり、はがきで実施する際とコストは大きく変わらなかった。メーカー企業とのタイアップ企画では、「対象商品を含む○円以上の購入」「対象商品を○個以上購入」といった複雑な条件が多く、それに対応できるサービスがなかったからだ。

レシートの読み取りにはOCRを使うが、従来のOCRはレシートに記載されている商品名や店舗名を読み取れる程度。人間が当たり前のように読み取っているレシートの構造までは分解できず、そこに記載されている数字が単価なのか、商品数なのかといった細かい情報は判別できない。

しかし、20年春にitsmonレシートがレシート特化型の「AI-OCR」機能を搭載。AIの深層学習を利用して、購入日時・購入店舗・購入商品・購入点数・商品の購入金額・合計金額・決済手段まで読み取れるようになった。さらに、従来のOCRでは対応できなかった、それぞれの情報を組み合わせた複雑な条件でのリアルタイム判定を実現した。

レシートの識別項目を示す画像
AIでレシートの構造を解析し、数字の“意味”も読み取れるようになった「itsmonレシート」

ツルハドラッグでは月4~5回程度、年間にして60~100回もの販促キャンペーンを展開しているという。それらをデジタル化できれば、コストを大きく圧縮できることは想像に難くない。さらに、itsmonレシートを導入したことで消費者のキャンペーン参加率も大幅に上昇。20年9月に実施した、ツルハポイントがかならず当たるキャンペーンでは、28万件もの応募があったという。

メーカー企業とのタイアップが倍増 キャンペーンをきっかけに来店客も増加

itsmonレシートは、購入者がレシートで簡単に応募できるキャンペーンシステムだ。店舗のキャンペーンページにアクセスし、スマートフォンのカメラでレシートを撮影。フォームから写真をアップロードすると、システムがOCR処理でレシートの文字を読み取り、キャンペーンの条件と照合する。応募条件をクリアしていれば、抽選でプレゼントが当たったり、デジタルクーポンがその場でもらえたりできる仕組みだ。

「ウィナスさんから新機能であるレシート特化型AI-OCRの話を聞き、これを活用すれば購入必須型施策をデジタルで実現できると考えました。メーカーさまタイアップキャンペーンの複雑な条件でも自動判定できるようになったのが、itsmonレシートを本格導入した決め手です」(加藤氏)

コスト面も導入の後押しとなった。他社サービスと比較すると費用を抑えて繰り返しキャンペーンを実施できる。キャンペーン数の多いツルハドラッグにとっては、コストメリットが大きいのも強みだった。

さらに「itsmonレシートにはレポーティング機能がついている点も決め手の1つだった」と加藤氏は語る。itsmonレシートでは、性別、年代、地域のユーザー情報、流入経路の情報など、レシートの読み取り結果から把握できる情報を元に、無料でレポーティングが実施される。データ活用によってキャンペーンの効果測定ができれば、次回以降のキャンペーンに生かすことができると考えた。

「レポーティングは、ウィナスのマーケティングチームがデータを分析し、キャンペーン終了時に顧客にお渡ししています。レポーティングによってデータを可視化することは、小売DXへの第一歩となるはずです」(増子氏)

ツルハドラッグでitsmonレシートを導入した結果、大きな成果につながった。まず、キャンペーン1回当たりのコストが大きく引き下げられたことで、企業が店舗向けの販促キャンペーンを打ちやすくなり、ツルハドラッグとメーカー企業のコラボタイアップ回数は3倍に増加した。また、アナログでの施策に比べてキャンペーンへの参加者も倍増。結果、店舗への来店促進につながった。

「今までメーカーさまがキャンペーンを実施する際は、シリアルコードや応募シールなどで購買証明をするために製造ラインを別にする必要があり、コストがかかっていました。しかし、レシートでの購買証明が可能になり、メーカーさまのコストが4分の1に減ったことで、費用対効果がアップしキャンペーンを実施しやすい環境が実現しました」(加藤氏)

ウィナスにとっても、レポート分析によってツルハドラッグへより効果的な提案ができるようになった。

レシートの識別項目を示す画像
分析レポート例

「集めたデータを分析することで、アナログ集計では分からなかった新たな発見があります。対象商品カテゴリーやカテゴリーの組み合わせ、告知方法などによってキャンペーンの効果が変わるため、メーカーさまとのタイアップ案件でより効果が出やすいスキームを提案できるようになりました」(増子氏)

itsmonレシートを活用することで、ツルハドラッグは来店促進につなげることができ、メーカー企業は販促しやすくなり、さらに消費者(ツルハドラッグのお客さま)もよりお得に買い物できるようなった。1つのサービスが「三方良し」ならぬ「全方良し」を実現した好例といえるだろう。

itsmonレシートを小売DXに取り組むきっかけに

ツルハドラッグでは今後、itsmonレシートを活用しメーカータイアップを増やしていく方針だ。メーカー企業には「特定地域で売上を増やしたい」「セット購入による自社商品や対象カテゴリーの売上増加を目指したい」などさまざまなニーズがある。「それらをすくい上げ、キャンペーンを通じてニーズに応えていきたい」と加藤氏は意気込む。

また、ツルハドラッグのスマホアプリと連動した施策も検討している。スマホアプリには顧客情報が入っているため、1to1マーケティングを増やしていくことで顧客満足度につなげていく考えだ。そのために、アプリ会員限定のレシートキャンペーンなど、アプリ連動による魅力的なキャンペーンを増やしていく。

「アプリ連動のためにアプリの改修を既存ベンダーに依頼しようとすれば、時間的・金銭的コストがかかってしまいます。アプリの大幅な改修をせず、どのようにキャンペーンを活用してアプリの利用促進や会員数の増加につなげていくか、ウィナスとともにチャレンジしていきたいと考えています」(加藤氏)

もともとはキャンペーンに伴う現場の負荷やコスト低減のために導入したitsmonレシートだが、それだけでなくデータドリブンでビジネスをさらに発展させる小売DXへのきっかけにもなっている。

コロナ禍によるビジネス環境の変化は、次代の勝者になる大きなチャンスでもある。レシートを発行しない店舗はほぼない。小売業界において店舗の価値が見直されている今、すでにあるレシートを活用し、小売DXに踏み出すきっかけになるのがitsmonレシートだ。

「始めから大規模なデータマーケティングに取り組むのはハードルが高い。だからこそ、まずはレシートを活用した小規模なキャンペーンから始め、その分析によってニーズを可視化するのが効果的です。データドリブンマーケティングの第一歩としてitsmonレシートをご活用いただければと思います」(増子氏)

転載元: ITmediaビジネスオンライン

ITmediaビジネスオンライン 2022年2月15日掲載記事より転載
本記事はITmediaビジネスオンラインより許諾を得て掲載しています